『アスペルガーと定型を共に生きる: 危機から生還した夫婦の対話』

臨床実習で回ってくる学生さんの中に「アスペルガー症候群」
の人がいました。
そこで『アスペルガー症候群』について「知的障害のない自閉症」
と再確認し、対応しましたが、結局普通の学生さんとの差は
わかりませんでした。

そんな時、私の昔からの友人がこの本を出版しました。
自分の家庭をさらけ出すということで、仮名を使っての出版です。
アスペルガー症候群を理解するいい機会だと、読ませてもらいました。

この本にはアスペルガー症候群のご主人と、普通の(「定型」
というそうです)奥さんの夫婦関係の変遷が書かれています。
最初、ご主人自身も奥さんも、ご主人が「アスペルガー症候群」
であると知らず、奥さんが精神的に傷つけられることが多くなります。
  「どうして私の思いをわかってくれないの?」
  「それを俺に言って、何の意味があるの?」
といった具合に。
奥さんが体調を崩して自宅で寝ていても、ご主人からは心ない
言葉が浴びせられます。
離婚の危機がおとずれた頃、奥さんは、ひょっとしたらご主人は
アスペルガーかも? ということに気付きます。
ご主人も御自身がアスペルガー症候群にあてはまることを自覚
し始めます。
それからはお互いを認め合うことで夫婦関係が改善され、読者は
ホッとさせられます。

この本は夫婦間の辛辣な言葉のやり取りがあるのではなく、
アスペルガーの奥さんを持つ齋藤バンダさんが東山夫妻の
インタビュアーとなって、インタビュー形式で進行しますので、
読みやすくなっています。
また、アスペルガー症候群の人がどんな言動を取るのかが
実例を示し、具体的に書かれていますので、アスペルガーと
いうものを理解するのに役に立つ本です。

ご主人あるいは奥さんが、言葉で言われたことを額面どおり
真に受けたり、他人の考えを理解することが苦手である場合は、
ひょっとしたらアスペルガーかもしれません。
同様に悩んでいる方にはいいアドバイスになると思います。
アスペルガーと関わりのない方でも、自分の周りの人々との
コミュニケーションを見直すいい機会になると思います。

どんな人にもアスペルガー的な要素はあると思います。
私には「アスペルガー」と「定型」の境界はどこにあるのか
をも考えるきっかけになりました。

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